本館竣工100周年記念
歴史ある建物

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正門Main Gate

 三井グループの迎賓館にふさわしい優美な正門。石門柱や外壁石材は創建時のまま残されていますが、鉄柵などの鉄製部材は、
第2次世界大戦時中の鉄の供出によって喪失。戦後に再建された鉄柵は質素なもので、いささか味気ないものでした。
そこで平成21年(2009)の外構改修時に創建時の姿を復元。古写真や当時の図面にもとづき、人の手による鍛鉄・鋳鉄によって制作された正門は、創建時のオリジナルに近い華麗な姿を見事に蘇らせています。

北側外観General View North Side

 正門から入った自動車は、本館北側中央に突出した車寄せにゆったりと横づけされます。
正方形をなして突出するこの車寄せの形式は設計者コンドルの好んだところで、同時期の旧島津公爵邸、旧古河男爵邸などに、
さまざまなバリエーションを伴いながら頻出しています。綱町三井倶楽部を訪れる賓客たちが、次々と馬車や車から降り立ち、
入口の階段を優雅に歩み行く姿を想像すると、それはまるで映画のワンシーンを見るかのようです。

玄関Main Entrance

 車寄せからの階段を上がった玄関前のステップの左右の窓と、正面の玄関扉にはステンドグラスがはめ込んであり、
非日常の世界への入口としての演出がうまくなされています。ステンドグラスの図柄はあざやかな黄色と緑の色ガラスを多用しており、これは|日島津邸や|日古河邸のステンドグラスと共通した特色です。扉を開け中に入ると、大理石の階段とそこに敷かれた赤い絨毯がゲストを1階ホールヘと誘います。国内外のVIPをお迎えする迎賓館にふさわしい玄関がそこにあります。

1階ホールFirst-Story Hall

 玄関を抜けてさらに階段を上がると、そこに広がっているのが1階ホールです。交差するアーチ、イオニア式の柱頭の柱、中央部には楕円形の吹き抜けがあり、その上部には半球形のグラスのドームが架かっています。そこから降り注ぐ自然光が室内を明るく照らし、ゲストを開放的な気分にさせてくれます。右手には歴史を感じさせる木製の大階段があり、結婚式を挙げたばかりの新郎新婦が、参列者の見守る中、この階段から下りてくるセレモニーは、綱町三井倶楽部ならではのもので一生の記憶に残るイベントとなっています。

小サロンSmall Salon

 小サロンをはじめとする各室は、英国18世紀のジョージアン様式で、比較的明るい色調を用い、精緻な天井のパターンをもっているのが特徴。各室の暖炉もまた、大理石の繊細でありながら簡潔な形をしたものが多く、様式統一がよく考えられています。部屋ごとにパターンが違う寄木の床は、最近まで絨毯で覆われていましたが、現在は壁側の一部を露出させ、あざやかな模様が見られるようになりました。小サロンは「謁見の間」とも呼ばれ、ホストがゲストを迎える場であったため、淡いブルーの壁で明るい印象の部屋としています。

大サロンMain Salon

 小サロンを通ったゲストは、そのまま奥のドアから大サロンヘと招き入れられます。ゲストが最初に落ち着く部屋であることから、豪勢な雰囲気を味わっていただくためにストライプ調デザインの金色の壁紙を使用しています。室内は華麗ではあっても、きわめて品のよい統−のもとに構成されており、コンドルの作風をよく示しています。ゲストはソファに座りウエルカムドリンクを飲みながら宴の開始を待ちました。現在もパーティーや結婚披露宴などのウエイティングルームとして多くのゲストをお迎えしています。

大食堂Main Dining Hall

 明るい朱色の壁が印象的な大食堂。古来日本では格調の高い部屋には朱色を用いていたことから、この色を使ったといわれています。ベランダに面して扉があり、中庭にも抜けられるこの部屋は、三井グループの午餐会、晩餐会、園遊会、集会等に使われてきただけでなく、戦後の財閥解体の会談や、昭和39年(1964)の東京五輪決定の要因の一つとなったといわれるIOC委員を招いての晩餐会など、数々の歴史的な出来事の舞台になった場所でもあります。現在は三井グループの各種パーティーや、結婚式披露宴の会場としても使われています。

中サロンMedium Salon

 コンドルの設計原図には"Smorking Room"と記されており、男性たちが葉巻をたしなみながら会話を楽しんでいた部屋であったと推測されます。ダマスク柄を基調としたシックな壁紙を使い、ジェントルでダンディズムを感じさせる空間となっており、当時は館内禁煙で喫煙が許されていたのはこの部屋だけだったとのこと。その後、喫煙が一般化するのにともない他の部屋でも喫煙が可能となっていましたが、最近では逆に社会の要請もあって全館禁煙となりました。現在は婚礼両家の控え室などにも使われています。

ベランダ・バルコニーVeranda & Balcony

 南側庭園に面するベランダ・バルコニーの円弧状の張り出しは、そこに繰り返されるアーチ形の開口とともに綱町三井倶楽部本館の大きな特徴であり、また同時にこの建物の魅力ともなっています。こうした円弧状に張り出したパロック的構成のベランダ・バルコニーは他に旧島津公爵邸のものがあり、ともに後期コンドルの新しい構成手法と見なし得るものです。綱町本館のベランダは、張り出しにそって左右から緩やかに降りる階段に特徴があり、この建物が庭園とのつながりを重視して設計されたことをうかがわせます。

2階ホールSecond-Story Hall

 2階ホールの東側には能舞台を造る想定で設けられたスペースがあります。当初から橋掛り、屋根、柱などはなかったので、本格的な演能を目指すものではなかったようですが、こうした趣向を盛り込むことによって、この施設が日本的な饗応を洋館内部に持ち込もうとした点は注目に値します。これは三井合名社長であった三井家総領家の第十代当主・三井八郎右衛門高棟が、能楽に深い造詣をもっており、その趣味の反映という側面をもった趣向であったろうといわれています。

音楽室Music Room

 以前は舞踊室として使われていたこの部屋は、もともと演能を行う際に演奏者が伴奏する部屋として設けられたもので、そのためホール側の壁が開放できるようになっています。部屋自体は洋風の造りですが、東側の二つの暖炉飾りに、能面と和楽器等をあしらったモチーフが採用されていることからも、観能の余韻を込めた意匠だと納得させられます。
現在は、洋式の結婚式を行うチャペルとして使われることが多く、結婚される方々が新たな人生をスタートさせる誓いの場ともなっています。

日本間Japanese-Style Room

 書院風意匠の壁面と天井をもつ純日本風の部屋です。2階ホールに能舞台が設けられると、この日本間の位置が舞台から橋掛りが延びていく先の鏡の間に相当します。演能を行う際には、この部屋で演能者は装束をととのえ、舞台へと歩み出たと考えられます。またこの部屋は、皇族をお迎えする部屋とするために和風の部屋としたともいわれ、実際に皇族が来館された際にはこの部屋をお使いいただいています。現在は出雲大社の分祀を受けた神殿を設け、神前の結婚式場として使われています。

談話室Lounge

 談話室は、かつで"Library"(書斎)と呼ばれており、貴重な本や書画に囲まれた団らんの場であったと想像されます。
その後、男性の遊技場として使われるようになり、囲碁、将棋、ビリヤード台などが置かれていました。戦後米軍に接収され、オフィサーズ・クラブとして利用されていた当時も、将校たちの遊戯室として使われ、小さなバーもあったことから、お酒を飲みながらビリヤードやカードゲームなどに興じていたようです。現在は婚礼時の記念写真を撮影する写真室として使用されています。

2階サロンSecond-Story Salon

 コンドルの設計原図に"Ladies'Drawing Room"とあるように、もともとは女性控え室として使用されていました。
室内は淡いグリーンの壁紙が貼られており、その名の通り女性的で華やかな空間となっています。
男性の遊技設備があった隣室の談話室とは違い、こちらはティールームも兼ねており、訪れたご婦人たちは、ここでお茶を飲みながらしぱしの歓談を楽しんだといわれています。現在は少人数の食事会などの貸し切り個室として使用されています。

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